定年退職も視界に入ってくるお年頃になると、哲学に興味が出てきたりしますね。
ご多分に漏れず僕もです。
若い頃は興味のあることが多すぎて、日々の生活に
追われ過ぎて、哲学的疑問などは思考の一番端に追いやられる訳ですが、ふっと、あーいつ死んでも不思議じゃあないなーと実感したとき、またむくむくと中学生みたいな?が存在感を増してくるのですね。
で、真っ先に浮かぶのがいわゆる世に言う「存在論」、「ある」ってなんじゃろ?
キリスト教では、それは創造主、神自ら宣った「私はある」で答えは既に出ているんですけど、神があるっていったいどういうこと?神は永遠の存在で、宇宙は一時的な存在?永遠にあるってどういうこと?
疑問は無限に続くわけです。
あるのはなぜ?なぜないじゃないのか?
むしろない方がよっぽど、安定してるはずなのに
誰もが思いついて誰もが忘れる、単純で、永遠に解決されない、謎
本棚からするっと浮いた感じの本があったので手に取ると、「現代思想としてのギリシア哲学」(古東哲明)ちくま学芸文庫でした。
買って積ん読したまますっかり忘れていましたが、10年近くたってしまった。
著者の古東哲明さんは、プロフィールによると広島大学教授とありますが、もう退官されているかも。
内容はギリシア哲学のコアとなるタレス、ヘラクレイトス、パルメニデス、ソクラテス、プラトン、M・アウレリウスを軸に、縦横無尽にその現代的意義を論じたもの。
まあ僕の哲学理解など超浅薄なので、ソクラテスより前の人=ソフィスト、ソクラテス=魂の産婆さん、プラトン=ソクラテスの言葉をまとめた人、M・アウレリウス=五賢帝の一人くらいしか思い浮かばないんですが、こんな哲学素人にこそ良きナビゲーターになる入門書です。(しかし現代哲学用語も頻繁に登場するため、さらっと読み飛ばすのはまず無理(^^;))
冒頭から最後まで、存在の謎に囚われてしまった先人たちの生涯が、古東先生の魅力的な語り口で紹介されていきますが、古東先生自身、存在神秘にとりつかれた子供がそのまんま学者になったような方で、こんな方でも、まだ答えは見つけていないらしい(^^;)
だとしたら、若かろうが、年をとっていようが、考えることに早いも遅いもないですね。
思い立ったら考えれば良い。
まずはこの魅力的なガイドブック、おすすめです。
巻末には参考文献とインデックス、永井均さんの解説もついてお得な1冊。