荒木優太著「これからのエリック・ホッファーのために」(東京書籍)を読んだ。

エリック・ホッファーは、アメリカの倫理学社会学

知力は高かったが幼少期に失明し、15才で奇跡的に視力を回復する。

7才で母と、18才で父と死別し、天涯孤独の身となったが、読書は続けた。沖仲仕として働きながら、著作もものにし、カリフォルニア大学バークレー校の非常勤講師も務めた。

代表作は、「大衆運動」「政治的人間」「波止場日記」など

これからのエリック・ホッファーのためにというのは、彼のような大学や研究機関に属さない在野の人間が知的に活動を継続していくためにという意味だ。

そのためのノウハウをさくっと教えてくれる本ではなく、日本にこれまで出現した一癖も二癖もある在野の知識人16名を紹介した本である。

各章ごとに1人1人のエピソードから得られる格言がゴシックで書かれている。

(これは役に立つ!)

三浦つとむ 言語学者

谷川健一  民俗学者

相沢忠洋  考古学者

野村隈畔  哲学者

原田大六  考古学者

高群逸枝  民俗学者

吉野裕子  民俗学者

大槻憲二  心理学者

森銑三   書誌学者

平岩米吉  動物学者

赤松啓介  民俗学者

小阪修平  哲学者

三沢勝衛  三澤勝衛

小室直樹  政治学

南方熊楠  生物学者

橋本梧郎  植物学者

うち8名は知っていたが、著作が残っている在野の知識人て結構いるんですね。

在野にありながら知的活動を継続するというのは、かなりの知恵と工夫がいるようで、

バリエーションはありながら、大体

1 家族や配偶者に全く寄生してしまう

2 生活できるギリギリのラインで働く

3 収入の得られる自分のメディアをもってしまう

といった手段に絞られますね。

1の一切の就労を拒絶した野村隈畔は、家族にはなりたくないけれど、「働きたくないでござる」の先駆者としてまあいっそすがすがしい。

2の印刷工としても有能だった三浦つとむは偉いなあ。

3の谷川健一、大槻憲二、森銑三なんかは理想だなあ。

いずれにしろ、凡人には無理か・・・といった諦観をぶち壊すのが著者の目的なのだ。

諦めてはいかんのだ。

著者の荒木優太氏は、YouTubeでネオ高等遊民さんが紹介していたので知ったが、まあ荒木氏自身が大学院を出てから清掃員の仕事をしながらも日本近代文学(専門は有島武郎)の研究を続けているっていうすごい人だ。

そう、たとえ働いていたって学問は出来る。

良書