副題に「身の程を知る劇薬人生論」とあるように、本書のターゲットは意識高い系の(それでいて実力が伴わないため、現実世界で苦しんでしまう)凡人。
みんなダメ(著者によればダメというのは人類のボリュームゾーン8割を占めるとのこと)なのに、自分一人ダメじゃないと勘違いして頭でっかちになり、意識高くなって自分探しなんかを始めてしまうと不幸になってしまうので、凡人はおとなしくダメを自覚して平安を手に入れましょうと。
そして、本書にはそのための著者の処方箋が示されており、イスラーム法学者としてまた一ムスリムとしてぶれない著者の見解は、魅力あふれるものです。
(注)こう感想を述べている私自身が、常日頃自分のダメさを自覚しているカトリックで、著者の見解にもともと近い立場にあるため、読者の方とは感覚がズレている可能性があります。
ただ、本書で具体的に示された処方箋は、まあなんとも、コロンブスの卵というか、何というか、これをやりきるのって、かなりハードだよなあ、ダメな私としては、むしろとことん底なしの自分探しなんかをしちゃった方が楽かも、と思ったりしました。
人生論だけでなく、現代社会批判、宗教論、家族論などもあり、否応なく著者への興味もかき立てられました。
次は「私はなぜイスラーム教徒になったのか」も読んでみたい。